「永島、お前アホか?屋敷だぞ?他の家より大きいんだ。」
「あ!?そんなことも俺も知ってる!バカにすん....あっ」
長富は思わず声を漏らした。そう、この場で長富以外は全員が気付いていたことがある。
村に一際目立つ建物が、民家の上にひょっこり顔を出していた。永島は民家の方だけに目がいっていて、気付いていなかったのだろう。
「よし。じゃああそこまで歩いていこう。村自体あんまし大きくなさそうだから、そこまで距離はないだろう。」
俺達は民家の間を通りながら屋敷であろう建物目指して歩いた。
民家の近くを通るだけで嫌な空気が流れていて、今にでも何かが襲い掛かってきそうな感じがして、無意識に身体を固めてしまう。
折角良い感じに解れた緊張感が一気に張り詰め、流石の吉永も周りを警戒するのに精一杯だった。
だが、その民家を抜けるのにあまり時間はかからず、抜け切ると右斜め先に大きな建物が見えた。
黒い屋敷、窓は古びた板で固定されていて、門も錆のせいで真っ茶色な上、半開き状態だった。
屋敷自体も所々穴が空いているし、痛んでいるのがすぐに分かる。
屋敷からは村の民家とはまた違う雰囲気を漂わせていた。気持ち悪く、だが身体が吸い込まれるなんとも言えない感じになってしまう。その異様な魔力のような感じに完全に圧倒され、足取りが遅くなっていく。