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アレが見えなくなってからもう数十時間になる。私はちょっと前までは考えられないような薄暗い自分の部屋の隅で縮こまっていた。

アレが見えなくなると、自分の部屋の有り様が良く見えて自分自身ビックリしてしまった。

部屋は物で埋め尽くされて床なんて見えたものではない。いつも丁寧に閉まっていた漫画や小説などの本棚は倒れ、本は散乱している。
机も本の上で倒れ、ペンなどは何本か折れてすっぽかされている始末。飾ってあった写真やポスター、賞状もどれがどれか分からないほど破り散っていた。
壁もでこぼこしており、かつて綺麗な白い壁は戦場の家のような有り様だった。

こうなったのは全てアレのせい。アレは私を弄んでいるように目の前に現れた。

アレが最後に現れた時なんて酷かった。目の前がありもしない幻覚で包み込まれ、アレがとった行動があまりにも異常で私は発狂しながら気絶した。


そして気がついた時からアレの姿は一度も見ていない。逆に恐ろしくはあるがここまで見えなくなったのは初めてだ。もしかしたら消えたのかもしれないと思ってきた。

人の死を目撃しアレが見えるようになってから実に五日間、本当に壮絶で辛かった分今の時間が天国のように感じ、ボロボロと涙が零れてくる。