息を切らせながら青山は声を掛けてくれた。そのおかげで俺は徐々に息を整えることが出来た。


「...うるせぇよ。」


一言そんな事を言うと、俺はゆっくりと立ち上がり、長富を正面から見た。
不安がりながらも牙を向ける姿、まるで天敵へ威嚇する子犬のようだった。


「....長富。お前...さっきなんて言った?」


「あ?だから連れ吐きって」


「そっちじゃねぇ!月璃が飛び降りたってのに、お前は違う方を見た!何を見たんだ!?」


俺の気迫に長富は身体を飛び跳ねてみせた。より一層に不安そうな顔になっていく。


「な、なんでそんなこと....」


「いいから。一体何を見たのか教えてくれ。」


長富は顎に手を当て、少し悩んでいた。何を悩んでいるのかは全く予想つかなかった。


「...気のせいだと思うんだけど、月璃の....死体って言っていいのかな?落ちた姿を見て、目を背けたんだ。そしたらさ....校門のところで女の人を見たんだ。」


「女の人?....」


「何か映画で出てきそうな感じだった。白い服来てめっちゃ髪が長かった。だけど、服とか髪に血がめっちゃついててさ...何か俺の方を見てる気がしたんだよ。
月璃の落ちた姿見たからなのかな?あれは多分幻覚。目をそらした瞬間に女の人は消えてたんだ....」