「そう!西条君。本澤君も忘れないでね!じゃあ照明かかったら次!早く出てきて!
中心まで........」


千恵はまるで映画監督のような働きっぷりを見せた。あっちいったりこっちいったり...加奈とはまた違う意味の忙しさを千恵からは感じた。

だが俺はある疑問点を抱えていた。

明らかにクラスの雰囲気は悪い。里沙の影響もあるだろうが、千恵の練習にうんざりしている生徒がいるのは明らか。自分が千恵の立場だとしても気付くのに当然のレベルだ。

なのに千恵は笑顔でクラスを指揮している。作り笑いではなく、とても清々しい印象を受ける笑み。

俺は千恵の働きっぷりをぼーっと眺めながら、内心は疑問が霧のように俺の心に出現し、モヤモヤとした気持ち悪い感情になった。