それもその筈。本来なら学園祭が明後日に迫っているならば意欲は上がるが、皆千恵の行動力には付いていけず、実に一ヶ月前からまるで前日へ控えているかのような練習を毎日している。

既にクラスメイトの気持ちは「学園祭を楽しもう」ではなく、「早く終わらないかな」となっているに違いない。


そんなあまり良くないクラスの雰囲気を見ても千恵はため息を少し吐くだけ。そこからは声を貼りながら関係のあるクラスメイトに指示を送っていた。


「ふぁ〜。本っ当に良くやってるよな"笹委員長"。去年も確かこれより酷くは無かったけど結構体力と精神力削られたよな〜。来年が恐ろしくて堪らねぇんだけど...」


あくびを吐き、頭を齧りながら敦が言った。まるで自分は関係の無いといった口調だ。多分ここに里沙がいたらこんな態度にはならないであろう。

"笹委員長"というのは千恵のあだ名だ。だが愛想いいあだ名ではなく、影で言われているあだ名だ。どこかの誰が思い付いたのかは知らないが、マンガやアニメでよく見る委員長的な奴に似ているからとの事らしい。



「ほら!ここで照明!本澤君、西条君!ここ重要だから絶対忘れないでね!」


「分かってるって。「ここでダメだったら後も崩れる」だろ?ちゃんとやりますよ。」