恐怖の渦の中



吉永は俺の問いにはすぐには答えれなかった。困った表情と共に黙り込み、自分の心に聞いているかのように下の方を見つめていた。

だが、答えを探し出せたのか、表情をキリッとして堂々な顔つきになった。


「それは...教えてもらってから決める。」


「なんだそれ?こうしたいっていう強い気持ちとか無いのか?それなら知らなくても別にいいんじゃないのか?」


「私は.....相手がどんなに凶悪犯だろうと、話を聞いてから判断したいんだ。何で犯罪に手を出したのか、どういう経緯でそうなったとか...相手が完璧に悪いかどうかってね...

ドラマとか見てるとさ本当に良く思うんだ。本当は無実だったり、したくてした訳ではないのに凄い重い罪を受けたとか。
それを受けた人は大体が"しょうがない"って諦めついてるけど、私はそうは思わなかった。人柄、経緯、思考、全てを理解した上でそれに見合った罰が必要だと...思ってる。」


「じゃあ今回の事件の主犯が現れたとしても、そいつの態度とか人間性とかで見逃したりするのか?」


吉永は手を胸に当てながら首を左右に振った。


「そういう訳じゃない。言ったでしょ?「それに見合った罰」って。理沙は...私の一部みたいなもので、将来一緒にドライブしたり、飲み会とかでハメ外したり、どちらかが結婚したらお祝いする、そんな事を夢見てた。私にとってはとても大切だった。