恐怖の渦の中


だが、図星をつかれた俺は理沙の母親と加奈の言葉が頭をよぎり、俺は沈黙で答えた。

黙ったまま視線を逸らしていると、吉永の目付きは更に険しくなった。それも当然だ。図星をつかれなければ、黙ることなんてまず無いのだから。


「....西条、知ってる事全部教えて。何か知ってるんでしょ?」



「に、西条君...」


加奈は急かすように言ってきた。加奈と理沙の母親との約束、"知りたがっていたら教える"を果たすべきだと、加奈に言われているようにも感じ、俺もそうすべきだとおもっている。
だが、心の隅のモヤモヤがブレーキをかけていた。

吉永を巻き込むことは本当に正しいのだろうか?
知りたいからという事だけでベラベラと喋っていいものなのか?
一時の感情に任せていいのか?

そんな不安が俺の横で囁く。そんな戯れ言は思った以上に効果的で、頭の中はまるで何も材料が入っていないミキサーを回しているかのように無意味な回転をしていた。


「...知ったとしてどうするんだ?もし、俺達が何か知ってるとして、お前はそれを教えてもらって何をする?」


この不安感を直すには教える理由が欲しかったのだった。約束事や感情論ではなく、もっと明確で、"教えなければならない"という理由が欲しかった。