私は理沙と良く休日も遊んだりしてて、理沙の家に行ったのなんてもう数え切れないくらいなの。だから、沙織ちゃんとも段々仲良くなっていって愛想いい呼び方で呼ばしてもらってる。逆にかしこまった呼び方すると怒られちゃんだ。」


吉永は悟りを開いたような口調で話していた。悲しくも、諦めがついているかのように感じた。


「だから沙織ちゃんはもう一人のお母さんだった。いつも優しくて、面白くて...本当にいい人だった。後から聞いたんだけど、家のお母さんと沙織ちゃんは順番にお見合いに来てくれたみたいなの...
私が目を覚ました時は沙織ちゃんが隣に居てくれた。私を見てくれた時、目に涙を浮かばせてすぐに抱き締めてくれた。耳元で何回も「ごめんなさい」って言って...」


吉永はゆっくりと右手を耳に当てた。その状況を思い出しているのか、少し目に潤いが出ている気がした。


「おかしいよね?理沙の事があって一番苦しいのは沙織ちゃんなのに...謝るのは絶対に私の方なのに...理沙を守れなかった...」


俺達は吉永に話しかけなかった、いや話し掛けられなかった。どういう言葉を掛けたらいいのかが分からなかった。吉永がいる立場がまるで自分達とは別次元、俺達は話を聞いていることしかできなかった。