「悪いな。俺達もさっき知ったばっかだったんでな。ここまで歩きで来たんだ。結構大変だったんだぞ?」
「あっそ...それにしても珍しい顔だね。斐川とはあまり絡みはないし、西条にしてもそこまでの関係は持ったことないしね....もしかして西条、私に気でもあるの?」
「え!?そ、そそそそ、そうなんですか!?」
加奈は俺を説得した時より大きな声で驚いた。その驚き様に俺も驚いたし、当然病室にいた患者達もビックリしていた。寝ている人に関しては、うめき声と寝返りを繰り返していた。
加奈は正気に戻ったかのようにハッとして、病室にいる人に向けて何度も頭を下げた。
俺はそんな加奈を無視して、改めて吉永と話した。
「そんなんじゃねぇよ。人が心配して来てやってんのに、何か特別な理由が必要なのか?」
「...必要だよ。」
吉永は微笑んでいた顔を心に閉まい、真剣な顔でこちらを見てくる。俺の心を見透かそうとしている鋭い眼光を光らせながら、上半身をゆっくりと起こした。
「私が目を覚ました日に...千恵が死んじゃったんだってね...」
「...誰から聞いたんだ?」
「沙織ちゃんから...あっ、理沙の....お母さんの事ね?