受け付けで聞いた病室、「三一五号室」のプレートを廊下を歩きながら探していく。
廊下には人の姿が見えず、二人だけ別の世界に来たかのような感覚を感じていた。

ようやく目的の病室を目の前にし、そのままドアをゆっくりと開けた。病室には四つベットが置いてあり、患者らしき人がそれぞれ寝ていたりテレビを見ていた。

その中で独特の雰囲気を放ち、じっと天井を見続けている人物がいた。吉永 理優だった。

俺達は吉永のベットの横に用意されていた椅子に腰をかけた。吉永は口は開かずとも目だけで俺達を追っていた。
吉永にとって、急だしあまり想像もしない人が面会に来たはずなのに、動揺の色は全く現れず、その無表情に俺達が動揺してしまう始末だった。


「...よ、よう吉永。目が覚めたのは昨日らしいが、大丈夫なのか?」


俺が最初に話しかけてみると、石になったかのような表情が徐々に感情を表してきた。


「見合いにきたっぽいけど...お土産はなさそうだね。一つや二つは期待してたんだけどね....」


吉永は微笑した。俺はそんな吉永を見てホッとはしたが、ダメージが深く残っていることを確信的に思えた。
俺の質問に対して冗談を言った、つまり強がっていると思ってほかならない。