だが、加奈は決してボソボソ声ではなく、声を荒らげる部分もあった。小心者の加奈なりに、俺に伝えたかったことが俺には必要以上に伝わっていた。
小心者でオドオドとしている。周りの意見に合わせることしか出来ないと思っていた加奈が、ここまで自分の意見を貫こうとしたことに、俺は驚きと尊敬を感じていた。

俺はポカーンと加奈を見ていると、加奈は顔を赤らめて視線を更に下へ向けていく。そして裾を掴んでいた右手を「あっ!」っと言うのと共に離し、何度も頭を下げて「すいません」と連呼した。

度胸があるのか小心者なのかよく分からない加奈に対して、俺は自然と笑みがこぼれた。


「...ったく、分かったよ。吉永がいる病院へ行こう。」


俺の一言が耳に入った加奈は、あからさまに嬉しそうな顔をこちらに向けてきた。まるで玩具を買ってくれた子供のような顔だった。


「だが、分かってるよな?吉永が知りたくなかったらすぐに帰るからな?流石に吉永の心の傷を癒すのはすぐにはできないぞ?時間をかけないと無理だ。
それを承知出来るなら行くが...いいか?」


加奈はブンブンと頭を激しく縦に振った。

俺と加奈は歩いていた進路を変えて、吉永がいる病院目掛けて一緒に足を進めた。