「そうですか...でも、すいません。吉永には教えられないです。この事件は奥に行けば行くほど危険性が明らかに高まるんです。それに信じる可能性も低いし、この事はやたらに広げちゃあいけない気がするんです。」


「そうね。西条君の気持ちも分かる。なら、せめて理優ちゃんがどうしても知りたいのであれば教えてあげて?お願い...お願いだから。」


俺は頭を下げる理沙の母親の事を強く否定出来ず、渋々「分かりました」っと一言だけ残すと家を出ていった。
外に出てみると案の定、青山の自転車の姿はなかった。

俺はそれだけ確認すると、家に向けて足を進めた。今日は色々と急展開があって、とてもじゃないが頭の整理が必要に思えた。

だが、そんな俺を加奈は生意気な事に引き止めてきた。


「に、西条君?か、帰っちゃうの?」


「あぁ。頭を整理したいし、もしかしたら気付くこともあるかもしれないだろ?逆に他に何処か行くところあるのか?」


「よし...ながさんの所には...い、行かないの?」


「何のためにだ?吉永が何か知ってるとは思えない。それだったら早く帰って情報整理した方がいいだろう?」


「し、知ってることがなくても行くべきじゃないのかな...?吉永さんは矢野さんのこと....大事に思ってたろうし...」