俺は後ろの理沙の部屋の存在を感じながら階段を降りると、そこには理沙の母親がこちらを向いて立っていた。
「もう大丈夫なの?なにか分かったことあった?」
「えぇ。とても助かりました。ありがとうございます。」
「そう....少しでも手を貸せて私も娘も、良く思ってるに違いないわ。」
俺は理沙の母親に一礼するとその横を通り過ぎ、靴を履き替えた。
加奈も履き替えた所で、俺はドアに手を掛けるとまた理沙の母親に呼び止められた。
「あっ、そうそう。理優ちゃんの所へはいったの?」
「吉永のことですか?いえ、行っていないです。」
「じゃあ丁度いいわ。西条君、お願い。娘の事件の事を隠さず理優ちゃんに教えてくれないかしら?」
「...吉永は意識が戻っていたんですか?いつ頃です?」
「昨日夕方くらいかしらね。私がお見舞いに行った時に目を覚ましたわ。」
勿論そんな事は耳に入ってきていない。恐らく学校側も分かっているが、千恵の事と重なって言えなかったのだろう。
理沙の母親の願い、出来ることなら叶えてやりたいと思っているが、俺の意思はそれを許さなかった。



