恐怖の渦の中


俺は背中を向けた青山に声を掛けたが、青山は家の前にあった自転車に乗って、風のようにどこかへ行ってしまった。
後ろを見てみると、加奈は棒立ちで真っ赤な顔を両手で隠し、何かブツブツいいながら何度も溜め息を吐いていた。


「と、取り敢えず聞きたいことがあるからさ...まだ残ってくれねぇかな?」


「う、うん....」


俺は加奈を先導しながらさっきのリビングのソファーに腰をかけた。加奈はその向かいのソファーに座ったが、しばらくは変な空気が漂っていて、中々話を切り出すことが出来なかった。


青山が家にまた訪れたのはピッタリ一時間後だった。青山はニヤニヤとしながらリビングに入り、加奈がまだ居るのを見て、更に口角を上げていく。


「なんだ、結局家にいたのか。ククッ。まぁこの一時間で何があったかなんて聞かないで置いてやるよ。」


「誤解だ青山。加奈は千恵に関しての話をしに来ただけだ。お前が来なかった一時間後は話してただけだ。」


「どうだかな〜。」


青山は収まりきっていない三日月の口元を隠しながら、目を細めて下目で見ながら言ってきた。正直殴りたかった。


「んで?斐川をまだ家に残してるのは俺に話を聞いてもらうためか?それとも本格的にギリギリまで楽しん」