恐怖の渦の中


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翌日昼頃にチャイムが家に鳴り響いた。
青山は今日来るとは言ったものの、正確な時間を指定してなかったので早めに起きて私服に着替えていた。昼頃に来るならもう少し寝れると愚痴をこぼしながら、家のドアを開けてやった。

すると、そこには意外な人物が立っていた。
斐川 加奈だった。
暖かそうな服を着てマフラーという完全装備で、黒い柔らかそうな手提げバックを持っていた。加奈は眼鏡を少し曇らせ、目元を真っ赤にして視線を斜め下にしながら、手提げバックをギュッと掴んでいた。まるで子供が叱られて、主張はあるがグッと我慢しているように見える。


「どうしたんだ加奈?っていうかなんで俺ん家知ってんの?」


「に、西条君に話が....あって。その....」


一番聞きたいところはスルーした上に涙を浮かべて泣きそうになっている。俺は溜め息を加奈に聞こえない程度で漏らした。


「取り敢えず家の中に入れよ。話は中で聞く。」


加奈はコクリと頷くと下を見ながら、黒髪を垂れ流して俺の家に入った。俺はその加奈の姿を、千恵が見たであろうあの女の人を照らし合わせた。見たことないが千恵の話を聞いて大体想像できるその姿、俺は暖房が効いている家の中で身震いした。