「君は親友である敦君を放っておいてわざわざ家まで言って笹井千恵に会いに行った。学校で話すようになったのもその日以降と聞いている。そして、先日刺されて出てきた。
こんなに材料があるのに「何も知りません」「信じて下さい」....そんなの通じる訳ないだろ!!
なんで刺された?なんで笹井千恵に付きまとった?被害者二人に何があったんだ!?いい加減吐け!!君は!何を!隠しているんだ!!?」
野宮さんは耳が痛くなる程俺に訴えるように声を荒らげる。大人の吠え声、普段聞き慣れていない分怖くも感じるが、それ以上に俺は絶望していた。
千恵を救おうとしても、結局何も出来ず助けになってやれなかった。千恵の家に自転車で訪問した時の「優しいんだね」っていう一言が頭の中にフワフワと浮いている。あの時、優しい自分を想像して吐き気は起きたが、何故か悪い気分では無かった。そんな事をふと思い出してしまう。
その思い出は何故か胸の辺りを強く締め付け、苦しくなり自然と涙が零れそうになった。
「泣いたってしょうがないでしょうが。早く答えなさい。」
呆れ混じりに言われた事も俺は返すことが出来ずに、ただ黙っているだけだった。
すると、視界の端で鼠色のドアが音を出しながら開いていくのが見えた。



