「知っちゃあいけないですか?」
野宮は暫く黙った。でも、その沈黙は俺に話すかどうかを迷っている訳ではなく、圧力の方を感じた。
「....死因は矢野 理沙と同じく変死だ。頭がパックりと割れて即死だったよ。家に帰ってきてからまもなく亡くなって、音と臭いで気づいた母親が発見した。相当ショックだらしくて、今は放心状態で別の部屋にいるよ。」
「...そうですか....」
「そうですか、じゃないでしょう。」
野宮さんはため息混じりに話し掛けてくる。座っていたパイプ椅子をコンクリートに擦らせながら引かせ、立ち上がった。
「死因や時刻的にも二人とも同じで、君は二人が亡くなる前に仲良くなった。"何も知りません"ってことはないでしょう?遺族の方々も苦しんでいる中で、君はそんな風に片付けるつもりかい?
もう一度聞くよ....君は、何を知っている?」
野宮さんは顔を近づけ圧迫してくるように質問してくる。強い珈琲の臭いが漂い、不眠だと勝手に想像してしまう。
「俺は....本当に何も知らないです。信じて下さい。」
「信じられるわけねぇだろ!!?」
野宮さんは声を荒げ、机を思いっきり叩いた。俺は野宮さんの不意打ちに身体をビクッと飛び跳ねてみせ、身体がキュッとしまるような感じがした。