ドラマや映画でしか見たことの無い尋問部屋、本来の自分なら興味を持っていただろうが、そんな気すら起きなくただ呆然としていた。

冷たく、孤立感を覚えるこの部屋は正しく俺の気持ちを映す鏡のように感じた。


「栄治君....いい加減演技はよしてくれよ。矢野 理沙はどうにしろ、君と共に行動していた笹井 千恵は死んだ。ただ行動していただけじゃなくて、君は前に顔を刺されていた。笹井 千恵がやったかどうかは今はあんまり考えることじゃない、何故そうなったかだ。
君...何を知っている?矢野 理沙との接点も亡くなる前に急に出来て、今まで一緒にいることもない笹井 千恵とも仲良くなる....その二人が都合よく亡くなっていく。君は....これが偶然だと思うかね?
....何を知っている?君は一体何を隠しているんだ?」


野宮さんは優しそうなトーンではなく、一人の刑事としてのトーンで俺に話し掛けてきた。一見睨みつけているようにも見えたが、どこか真っ直ぐで、俺に出来ている情報の穴というものを突こうとしていた。

俺は野宮さんから地面のコンクリートに目をやって、自分の意志とは関係なく、ポロッと出たように話した。


「....知らないですよ。そんなのこっちが聞きたい。....千恵は、千恵はなんで死んだんですか?死因はなんですか?」


「....そんなもの知って何になる?」