「野宮さん。話は後でもいいですか?俺達行かなきゃいけない所があるんで。それじゃあ」
俺は千恵の腕を掴むと野宮さんの横を通り抜けようとした。だが、通り過ぎる時に野宮さんに腕をガシッと捕まれ、坂目さんが目の前に立ち塞がった。
「待ちなさい。行かなきゃいけない所があるのなら送っていってあげるから、まず栄治君。その包帯はなんだい?血が滲んでいるが....」
野宮さんに指摘されて、包帯に手を触れると確かに血が滲んでいるのが分かった。触れると傷口が痛み、少し頭を引いてしまう。
「その滲み様に反応。カスった程度じゃ済まされないね。家の中で何があったのかな?」
「そ、それは....」
「す、すいません!」
千恵はいきなり声を上げて野宮さんに向けて頭を下げる。
「私がやっちゃったんです。西条君がお見舞いに来てくれて、色々話してる時に部屋に置いてあった、想い出のあるカッターを持ってたんです。立ち上がった時に滑っちゃって....西条君のほっぺに刺さっちゃって、応急として包帯巻いたんですけど、カッター錆びてるしこれじゃあ不十分だから病院行こうとしてたんです。」
「....何でそんなカッター持ったのかな?その話題だったの?」
「いえ、ただ目に留まったんでつい....」



