恐怖の渦の中



「....今、あの女の人は見えているのか?」


俺が聞くと、怯えながらも周りを見回した。


「....ううん。今は見えてない。」


「そっか....なぁ?もし女の人の事を知っているかもしれないって人がいたとしたらどうする?」


「え!?本当に!!?」


千恵はさっきまでの衰弱としたオーラを吹き飛ばし、すごい勢いで食い付いてきた。


「誰なのその人!早く会って話しよ!?あの女の人を追い払える何かを知ってるかもしれない!!」


「ま、待てよ!落ち着けって。その人はあんまし良い印象じゃねぇし、敵か味方は愚か確実に情報を持ってるかどうかも分からねぇんだ。」


「そんなの別に関係ないじゃない!今私達はあの女の人について何も知らない。それなら、吉と出ても凶が出ても行くしかない!」


「わ、分かったよ!じゃあ早く行くぞ。その人は和一先生だ。体育館で見たろ?」


「うん、分かった。じゃあちょっと待ってて。服と髪の毛とか直すから」


そう言い残すと、千恵は階段を登って着替え、洗面台へ向かった。洗面台からはリビングでも水やドライヤーの音は聞こえた。

数分待ってみると、千恵はさっきよりかはマシな格好にはなっていた。だが、クマはやはり消えないし、見た感じ誰でも気分が悪そうに見える。