恐怖の渦の中


千恵は思い出したくなかったのか、震えていた。だが、しばらくすると震えながらも口を開いた。


「今日は朝からおかしかったの。目を覚ましたら....あの女の人の顔が息が聞こえるくらいまで近くにあったの。私は振り払って見たんだけど、その時には消えていて...そしてすぐに姿を現してきた。本当にその繰り返し。ここまでは距離が近いっていう事以外は前と同じだったの。
だけど...」


「だけど?」


「あの女の人....私に話しかけてきたの。「怖い?」って....私は怖くて何も言えなくて黙ってたら、女の人が怒って「怖いのか聞いてるんだ!」って....近寄ってきたの。あんなに感情を隠してた癖にいざ出るってなったら、私....本当に怖くて、声も出なかった。」


「....だから、あの女の人を攻撃しようとカッターを?」


「うん....だけど、私がカッターを振り回すと、女の人は霧のように消えちゃって....私を煽るみたいにまた姿を現すの。だけど、時間が経つ度にバリエーションが増えてきてね....」


「バリエーションが増えた?どういう事なんだ?その現れ方が変わってきたのか?」


「現れ方っていうのかな?....女の人は小さくなって大人数になって出てきた。その小さい女の人は全員こっちを見てきて.....私叫びながらその女の人を刺したの。