右頬は熱く、鋭い痛みが全体を巡って襲ってくる。徐々に入っていくのも悪く、その痛みは延々と続くようにも思えた。
「痛ってええええ!!千恵!!やめろ!死んじまう!!マジで...マジでやめろって!!千恵ぇ!!!」
もう限界に感じた。力的にはまだ抵抗は出来るが、徐々に入り込んでいくカッターに抗えないと悟ってしまった。こんな事続けてもどうせ力尽きる、なら早く力を抜いて一気にやってもらった方が楽なんじゃないかっと思った。
その考えを拒否する理由もない俺は、少しづつ手から力を抜こうとした。
だが、その前にカッターの動きがピタリと止まった。頬の中で止まったカッターの先端辺りから、じわっと痛みを感じられる。
千恵は目を見開いて口をポカーンと開けていた。一瞬そのまま気を失っているかと疑うが、千恵の黒目がいろんな方向に震えていた。
次第にカッターから千恵は手を離して、震える両手を見つめた。
「わ、私は何を....私が西条君を?」
「正気に戻ったのか....?」
俺は身体を持ち上げて、背中を床ではなく壁に預けた。まだ刺さっているカッターを無理矢理勢いよく抜くと、また痛みが走り今度は血もドロドロと頬から垂れ落ちて止まらなかった。動揺している千恵の任意はないが、そこらに倒れている中でまだ綺麗そうなぬいぐるみの皮を剥ぎ取り、赤く染まった頬を押さえた。



