ドア越しだとそうでも無かったが、家の中に入ってみると結構大きい物音と叫び声。叫び声は千恵の声で、上の階から聞こえてきた。
千恵の部屋からだ。
階段を勢いよく駆け上り、部屋のドアを開けてみると、思いがけないような景色を目にした。
一言で言えば千恵の部屋はめちゃくちゃだった。勉強机は倒れていて、何かで殴ったようにでこぼこしている。壁には多く穴が空いていて、カーテンも乱雑に引きちぎられて投げ捨ててある。なんと言っても問題はぬいぐるみだ。
あんなに丁寧に飾ってあったぬいぐるみは、部屋の床にそこらじゅう捨ててある。その多くは首や腕がもげており、部屋中ぬいぐるみのワタだらけだった。部屋にあかりはないのは、電球そのものが壊れていて破片がすぐ下に落ちているのがわかった。
そして肝心の千恵はボロボロになったベットの隅で、頭を抱えて縮こまり、泣き叫んでいる。眼鏡もヒビが入って髪もクシャクシャ、クマなんて更にくっきりとなっていて、肌も酷く荒れている。
「いやだぁ!!助けてよぉ!助けてええええ!!一体いつになったら終わるのよおおおおお!!!お母さんお父さん!!誰か来てよおおお!!あっ....え?ひっ、きゃあああああああ!!」
耳が痛くなる程叫び声を上げていて、俺はその変わりように一歩足を無意識のうちに後ずさりしてしまっていた。



