電話のコールが耳元で囁かれるように鳴っている。電話のコールは今まで以上に時間が掛かったように感じた。
数回のコールが鳴ると受話器が上がるような音がした。ようやく繋がったのだ。
「千恵!?どうしたんだ?一体何が起きてる?」
「西条君西条君西条君!!!助けて!お願い!!殺される!....私殺される!怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い....」
壊れた玩具のように何度も「怖い」っと弱々しく呟いていた。その電話越しでも伝わってくる異常を、身体全体で感じていた。
「お、落ち着けって千恵!取り敢えずい」
「落ち着ける訳ないでしょ!?こんなの耐えられるわけない!!西条君はいつもそうやって自分が安全なのをいい事に偉そうな事を言う!!私の気持ちを考えてよ!!!もう無理なの!限界なの!!早く助けに来てよ!」
「分かった、分かったから!今どこにいる!?」
「そんなの家に決まってるでしょ!?早く来て助けてよ!!私がもし死んだら、西条君のせいだからね!!」
「は!?何で俺のせいなんだよ?」
「何回も電話かけても出なくて、メール送っても返事なくて!どうせいつもみたいに面倒くさく思ってたんでしょ!?返事しないとまた後々面倒になるから、今もきっとイライラしながら電話してるんじゃないの!?」



