そして三時間目が始まった。俺はまだ本の続きが気になっていてまたもや集中出来ずにいた。ふと横を見てみると絶望感で包まれたような顔をしている敦がいた。
この顔はさっきの失態じゃなくて、冷静になったら里沙のことを思い出してまた落ち込んでいる。俺がいる所は窓側。俺の影に重なった敦は影に溶け込みそうな感じになっていた。

里沙が学校に来なくなってから今日で四日目。五日前に里沙は人が死ぬ所をたまたま目撃し、そしてそのショックで家に引きこもっているそうだ。人が目の前で死ぬのは他人であっても相当だと思う。
本や映画などで表現されているものの比では無いはずだ。里沙は見た感じ明るい性格だ。そんな彼女が引きこもるとなると、生で見るのは凄い衝撃的なのだろう。


「えっとぉ〜じゃあ次の問題を....本澤。解いてみなさい。」



「へ?」


先生の声で俺は自分の思考から現実へ戻され、敦が指名されていた。敦はポカーンとしててどこか抜けている感じだった。

今の精神テンションと苦手な数学問題が重なっていて夢でも見ているような顔をした。



「「へ?」じゃないだろ本澤。早く答えなさい。問題三の(四)の問題だ。答えは何になる?」


「え?あっ...えっとぉ....」