先生はその後、俺達生徒をワゴン車に誘導して行った。ゾロゾロとワゴン車へ向かっていく。
「ねぇ。君、西条君でしょ?」
声を掛けられ振り返ってみると、里沙の母親の姿が目に映った。
「はい、そうですけど。」
「貴方の事は娘から聞いているわ。...学園祭の、前日は特に良くしてもらったとか....」
思い出して辛くなったのか、折角乾いてきた目から潤いが出てくる。
「い、いえ。俺はそんな大したことはしてないです。」
「そんな事ないわ。娘が学校を復帰できた時の放課後に色々と助けてもらったそうで、なのに迷惑を掛けてしまって....あの子ったら、「謝らなくちゃ」っていって焦ってたわよ?」
涙を浮かべてはいたが、必死に笑顔を作ろうとしているのは伝わってきた。実の娘が自分より死んでしまう事を自分なりに受け入れようとしていると感じる。
「あっ。そういえば、本澤君は?今日は来てないの?」
「はい。あいつは今学校を休んでて...」
「そうなの....本澤君もあの日良くしてもらったそうで、お礼をと思ったけど....もしかして、娘が原因なのかしら?」
里沙の母親は申し訳なさそうにして聞いてきた。
本当の事を言おうかどうかは迷ったが、別に秘密にする必要は無いはずだ。



