そこから放課後までいつも通りに授業はみっちり行われていたが、どれも頭に入るものではなく、それは俺だけではなかった。今まで教室中がワイワイと騒ぎながら楽しそうにやっていた授業も、無人島に送り込まれたかのように静かだった。
生徒も当然だが、先生も少なくともショックは隠せずにいた。里沙は生徒だけでなく、先生にも評判は良い。自分の教え子が亡くなってしまった事実は、大人でも結構こたえるらしい。

放課後のチャイムがなると、教室にいた俺達は荷物を持って先生の指示に従い、ワゴン車二台それぞれに乗せられた。ワゴン車内でも相変わらずの重い空気は漂っている。スマホをいじる音も無ければ友達同士隣に座っているのに、喋り声は本当にヒソヒソ声だけだ。

それもその筈、今から向かう場所は里沙の葬式場だ。クラスの人気者の葬式など、みんな行きたくはないのだろう。まだ、里沙の死を受け入れていない者も多い筈なのに。


数十分後、ワゴン車は止まるとため息を吐きながら、降りていった。空はもう日が隠れかかっていて、薄暗く弱々しく見える星空に覆われている。その中で一つ光を浴びていたところには多くの人達が、揃いも揃って同じ色の服を着て立っていた。大人から子供まで閉ざされた扉の前で話をしながら待っている。だが、決して明るい話はしていないのか、誰一人笑ってなんかいない。