「何でそんなこと....」



「いいから。あんまり考えずにすぐに頭に浮かんだ事を言ってくれるだけでいい。」


俺は目線を逸らして記憶の引き出しを探った。たが、一番最初に浮かんでくるのはあの女の人で、それ以外は全く浮かばない。俺が探ってるのはそれ以外の事なのに、あの女の人の事しか出てこなかった。
スっと和一先生の方を見ると、こちらをジッと見てくる。和一先生はカウンセラーと言っていた、この質問で俺の心の中を見ようとしているのは明らかだった。
だが、何故俺に質問してくるのかが分からない。数多くいる生徒の中からなぜ俺を....


「そうですね....敦がやっぱり結構参っているっていうか....千恵とか他に休んでる人達も心にきてるって事ですかね?」


俺はあの女の人の事は口には出さなかった。カウンセラー程幽霊とか非現実的な事は信じないっていう印象があるし、これで麻薬使用者と疑われても勘弁だ。尚且つ、この事は千恵本人が言うべき、横から出ている俺が言うべき事ではないと思ったからだった。

和一先生はしばらくこちらを見続けると、少し頷いてみせた。


「うん。そうか、なるほどね....後、一つだけ質問するね。
栄治君は幽霊とか信じるかい?」


「え?」


意外な質問で俺は口から自然と音がこぼれた。