千恵は俺にすがった。情報的には千恵よりない俺にだ。千恵は強く俺に捕まってきて、牙を折られたライオンのように、虚しい目で助けを求めてきた。
千恵の声は教室に満ちて、他のクラスメイトの視線を集めた。


「お、おい千恵!落ち着けって。取り敢えず保健室行って休もう。な?」


俺は千恵の手を解くと、その手を首後ろにかけて怪我人を運ぶように保健室へ向かった。
向かっている時にも千恵は顔をしたに向け、ブツブツと泣きそうな声で独り言を呟く。千恵の精神状態は明らかに限界に来ていたのを確信した。

保健室のドアを開けると、いつも見かける女の保健室の先生とさっき紹介されていた和一先生がいた。


「どうしたの西条君!?笹井さん?笹井さん!?」


「すいません先生。千恵は体調が悪くて、まだ矢野さんの事件を忘れられなかったみたいで、具合が悪くなっちゃったぽいです。休ませてやっていいですか?」


「も、もちろんよ!こっちのベットに寝かせてあげて?」


千恵はゆっくりとベットへ横たわると、枕を抱き枕のようにギュッと抱いた。だが、それはどうしようもなく、抱かないと落ち着けないといった感じだ。