「あ?んなやつ見たことねぇよ。そんな事でわざわざ来たのか?もう帰ってくれ。」
「ま、待てって!」
俺は敦がドアを閉めようとした所を抑えた。
敦がギロっと睨んでくるのを見ないようにした。
「本当に大丈夫か?お前。」
「大丈夫か?....だと?大丈夫なわけねぇだろうが!!!」
敦は声を荒らげるとドアを思いっきり蹴ってみせた。その勢いと今まで見たこともない敦の怒りに衝撃を受け、数歩後ずさりしてしまう。
「里沙ちゃんが...里沙ちゃんが死んじまったんだぞ!?しかも....あんな酷い....
俺の希望だった里沙ちゃんと....もう会うことも出来ねぇんだぞ!?里沙ちゃんが何をした!!
....お前...もしかして里沙ちゃんの幻覚が見えているかと思って俺に会いに来たのか?」
「ち、違う!そうじゃな」
「うるせぇ!!余計なお世話だクソがッ!さっさと帰れこの野郎!!」
敦は言うだけ言って勢いよくドアを閉めた。閉められた時、閉め出された時の無力感と孤立感を覚え、時が止まったようにも感じた。
心配して来てやったのにこの対応をされて腹はたったが、喋れただけではしゃいでいた奴だ。無理もなく思って俺はそのまま家に帰った。
家に帰ってきても当然誰も居なく、静けさが充満している。



