きっと誰もが探している。

「まぁ、そーだけどさ…。喧嘩の仕方教えてきたの姉ちゃんじゃん」

葵は不満気にぶつぶつと文句を言う。

「私が教えたのはいざという時に自分を守るためと、大切な人を守るためでしょ。不良に育てるためじゃなかった」


実際喧嘩の仕方を教えたのは私だ。


うちの中学はガラが悪かったから、私も何度か流血並みの喧嘩に遭遇したことがある。


自分を守る護身術くらいを教えるつもりだったのに。



「まーたお母さんに怒られるよ。とにかく座って。手当てしたげるから」



さっき逃げようとして立ち上がったままだった葵をソフ
ァに座りなおらせ、救急箱を持ってきて手当を始める。