「あ、言いたくなかったら全然良い…よ?」
遠慮がちに、困ったように高崎さんが言う。
そんな言われ方をしたら教える以外無いじゃん。
「いや、別に…。昨日は、駅前歩いてたらナンパされたからちょっと遊んでた」
取り繕うように笑いながら言う。
何故か後ろめたさを感じる。
「え、ナンパについていってたの?」
高崎さんが、そんな驚いた目でみるからかもしれない。
凄く純粋だからかもしれない。
「まぁね」
にこりと、目を合わさないように目を細めて笑った。
「………そーゆーの、やめた方が良いんじゃ……」
高崎さんがごく小さい声で何かを呟く。
「え?なに?」
普通に聞いたつもりだったのに、自分でも信じられないくらい冷たい声が出た。
高崎さんの肩が僅かに揺れる。
「…ううん。やっぱなんでもない」
高崎さんは何かを隠すようにふんわりと笑った。
長い前髪のせいで、表情は読みとることが出来なかった。