貴方の残酷なほど優しい嘘に

「これで16歳ってんだから、世も末だね。ウチの息子に爪の垢でも食わせてやりたいよ」

と、大将がよく意味の分からない事を口にした。

それにしても、明らかに誠君はこのお店の常連だ。およそ16歳が通う様なお店では無い様に思える。ますます彼とゆう人間の謎が深まって行った。しかし、その疑問は直ぐに解消された。

「今日は火曜日だから長里君のとこは休みか、定休日が作れるんだから、景気がいいんだなぁ」

「長里君のとこ?」

「そういえば言ってませんでしたね。俺、板前してるんです、と言ってもまだまだ駆け出しですけどね。ここも料理長によく連れてきてもらってるんです」

なるほど。彼が大人びている理由が少しわかった。

「ここ、本当に美味しいんですよ。ゆかさんにも知って欲しくて」

「長里君は嬉しい事を言ってくれるね、はい、生ビール2つね」

大将が私の気持ちを代弁してくれて、私達はグラスを合わせて『乾杯』と言った。

出てきた料理は本当にどれも美味しく、生ビールの後に頼んだ日本酒も進んだ。お酒は弱い方ではない、だが、気付いた時には視界が揺れていた。揺れた視界に誠君を捉えたが顔色一つ変わっていなかった。

「お姉さん、長里君に合わせて飲んじゃダメだよ。彼『ザル』だから」

そうゆう事はもっと早く言ってよ。てゆうか16歳で『ザル』って・・・

そこで私の意識は無くなった。




目を覚ますと、側からシャワーの音が聞こえた。酷い頭痛に顔をしかめる。眉間にシワを寄せながら回りを見て何処にいるのかわかった途端、血の気が一気に引いていく。

ラブホテルの部屋だった。記憶は無い。今日どの下着だったっけ、などと見当違いな事を考え、そうじゃないと自分を叱責した。いくら何でもまだ早すぎる。出会ってまだ2回目、付き合ってもいない、誠君の苗字だってさっき知ったばかりだ。

まだ服は着ている。意識を取り戻したのが事の後で無くて良かったと胸をなでおろした。バスルームのドアが開く音がして、何も覆うもののない誠君の身体が目に入った。

背中を向けているから、私が目を覚ましている事に気付いていない。頭を拭き終わった誠君が顔を上げた、相変わらず背を向けているが、鏡を介して目があった。

「わっ!」

誠君は驚いて、見えない位置に移動する。

「お、起きてたんですか?」

「あ、うん、今しがた」

顔と同じ様に少し病的な白い肌は美しく、華奢に見えた身体つきは薄い筋肉に覆われていた。私は彼の裸に見惚れていた、だから声をかけ損なった。