カレーを食べる気になれず、もう寝ようと決めてシャワーを浴び、髪を乾かしていると携帯電話が鳴った。

自分の様子を察した彼が電話して来たのかと、慌てて電話を手に取った。だが、ディスプレイに表示されていたのは彼の名前ではなかった。

私は一体何を期待しているんだ。私の様子がおかしいとか、そんな事に気付く人間ではないのは嫌とゆうほど思い知ってるはずなのに、まだ期待している。

「もしもし」

電話は高校時代の先輩からだった。

「あ、ゆか、今大丈夫だった?」

「はい、どうかしたんですか?」

「えとね、今度の日曜日にカラオケに行かないかなって思ったんだけど、どうかしたの?」

「いいですよ、どうかしたって私がですか?」

「うん、なんかあったでしょ?声が違うもん」

この人はいつもこうだ。お世辞にも気の利く人ではないのに、私が辛い時は必ず気付く。

「なんにも無いですよ」

努めて平静を装って言ったが、私の努力は全く意味を成さなかった。

「嘘、絶対なんかあったでしょ?言いたくないなら無理に聞かないけどさ、我慢出来なくなったら私に言いなよ?聞いてあげるぐらいいくらでも出来るから」

「ありがとう・・・ございます」

「ゆかはいつも我慢し過ぎるからね。あ、そうそう、日曜日なんだけど男の子も1人来るんだけど大丈夫だよね?」

「え?いや、それはちょっとマズイです。彼に知られたら怒られます」

「バレないわよ、それに男の子ってほんとに男の子なの、16歳の」

「16歳って先輩の従兄弟か何かですか?」

「ううん、そうゆうわけじゃ無いんだけどね、とにかく大丈夫だよね?」

先輩と男の子の関係は気になったけれど、16歳ならば仮にバレても変な勘ぐりをされる事も無いだろうと私は了承した。

先輩は待ち合わせ場所と時間を言って電話を切った。

ベッドに入って16歳とゆう言葉を思い浮かべ、自分がその歳だったのは半生近く前だと虚しくなり私は目を閉じた。