貴方の残酷なほど優しい嘘に

「ゆか、あの子大丈夫なの?」

誠が風呂に入っている時、母が聞いて来た。その、含みのある言い方に私はついトゲのある口調になってしまう。

「大丈夫って何が?」

「だって、ほら、随分若いし・・・」

「今時、13歳差なんて珍しくないよ」

ソファーに座っていたさきが口を挟む。

「それにあの子の腕の傷は、あれでしょ、自殺しようとして・・・」

母のその言葉が私の中の何かに触れ、その何かが弾けた。

「だから何なのよ!誠の腕に自殺の跡があったら何なの?それが今の彼と何の関係があるって言うの?彼の事が気に入らないならそう言えばいいじゃない!歳の事とか、傷の事とか、そんなもの持ち出して言うなんて卑怯だよ!」

ただただ悔しかった。誠の決意を、気持ちを侮辱されたみたいで、しかもそれが自分の母親だったのが余計にやるせなかった。

「誠が袖を捲ろうとした時、それを止めた私に彼が何て言ったか教えてあげようか?この傷も自分だからって言ったの!見せないようにする事だって出来たのに、誠はそうはしなかった!お母さん達にちゃんと自分の事を知って欲しかったから!」

とめどなく溢れる涙と、感情を抑える事が出来なかった。気に入ってくれたと思った。父も母も誠を気に入ってくれたと思っていたのに、そうではなかった。

「別にお母さん達が認めてくれなくたって構わない、私は誠と生きていくって決めた。誰に反対されても、親子の縁を切っ・・・」

「はい、そこまで。ゆかさん、それ以上は本心で無くても言っちゃダメだよ」

誠の手が私の口を押さえていた。背後に立っているので顔が見えない、途端に不安になった。

誠はどんな表情をしているのか、精一杯の自分で、全て見せて真摯に向き合ったのに想いは母には届いていなかった。

怒ってる?

哀しい顔をしてる?

振り返った私の目に映ったのは、いつもの優しい目で見つめる誠だった。無性に寂しくなり、私はその胸に顔を埋めた。

「お母さん、僕の若さが心配な事はわかっているつもりです。この傷の事も気になって当然だと思います。でも、ゆっくりで構いません、僕の事を少しずつわかっていただけたら嬉しいです。この傷は僕が弱かった証です。だから、この傷も僕の一部なんです。もう2度と自分から命を捨てようなんて考えません。それはゆかさんを悲しませる事になるから」