「ただいま葉月、葉月のぶんまでタオル持って来たぜ」



朱莉がドヤ顔で私にタオルを渡す。



「あ、ありがとう」



先ほどのシスコン兄に続いてなので脳がいまいちついていかない。




「はあー、碧にいかっこいいだろうなー!!」



シスコン兄を見たからブラコン妹を見てももう驚かない。



そりゃまあ、若干引くけど。




「あ、そういえば軽音部ってあーりんがいるんだよねー。」




「あーりん?」



あーりんって誰や。



朱莉から何回か聞いたことはあるけど、興味ないからわからない。




「知らないの?あーりん。葉月の幼なじみくんでしょ?」



「…は?」



幼なじみくん…?



「蒼井臨。2年S組2番、4月20日生まれの牡羊座。無口でがさつ、女子への態度が冷たい。それに便乗したルックスと抜群のスタイルで学園の女子はめろめろ。あおいりん、だからあーりんだね。S組ってところからして特進コースだね、もしかしたら特待生かも」



嘘だ。



臨が、この学園にいる…?



そんなわけ…




「さすが情報屋、早いね…でも、臨はそんな子じゃないから違う人だよ。少なくとも6年前は人懐っこくて素直で性別関係なく優しい子だったから、きっと同姓同名の人じゃないかな?笑」



蒼井臨は私の幼なじみだ。



隣の家に住んでいて、小さい頃はよく一緒に遊んでた。元々親同士が仲良くて、その影響か私達も幼稚園とか小学校も一緒に登校するくらいの仲だった。



だけど臨は家庭の事情で6年前に引っ越して、音信不通になっていたのだ。



だから、こんな近くにいるわけがない。



「でも、臨なんて名前の男の子少ないよ?」



朱莉の言う通り、臨は男の子にしては珍しい名前だ。



けど臨がこんな近くにいるわけがないんだ。



こんな近くにいたらおかしい。



…まあ本当は、私がそのあーりんを臨だと認めたくないだけなのかもしれないけど。



「…そんなことよりもライブだライブ!!朱莉がタオル持って来てくれたんだから、精一杯振り回さないと!」