程なくして家のインターフォンが鳴った。

また溜め息をついてモニターを見た。


案の定、透流だった。

音だけ消して玄関のドアを開けた。


「ちぃちゃん!久しぶりっ」


来るなり満面の笑みが私を待ち構えていた。

白いシャツに黒いパンツを履いて、ジャケットを着ている、ただそれだけの格好なのに顔が整っているとカッコ良く見えてしまうのはなぜだろう。

私は片方の手にピーナツチョコの袋をぶら下げている、ただの女だっていうのに。


「二日しか経ってないよ。私が家を出てから」


透流が家に顔を出さなかっただけでしょう、と言うと彼は曖昧に誤魔化して笑った。

いつからこんなに節操が無くなったのかしらと思う。

透流は女の人の家ばかりを転々とするのだ。


「今回はどんな人なの?」


入れば、と言って大きくドアを開けると、うんと言って背の高い身体を屈めるようにして入ってくる。


「んー、綺麗なひとだよ。肩くらいの髪で、お酒と猫が好きな」


「お酒と、猫」


大人な感じの女性なのだろうか。

こんな学生相手にするなんて、変わっている。


そうは思うものの、いや、と私は思い直した。


透流には何か人を惹きつける才があるから仕方のないことなのかもしれない。


ちぃちゃんは?と話を振られて、答えようとして言葉に詰まる。

ここまで来てようやく、ふられたのだということに改めて気がついた。