ベッドに座って、透流のことを思い出す。
子犬のような顔、柔らかい髪、甘ったれな口元。
ちぃちゃん、ちぃちゃん、と私を呼ぶ声。
透流。
───ありがとう、ちぃちゃん!
──何のこと?
──ちぃちゃんのおかげでね、
最後に聞いた透流の声を思い返そうとして、途中でノイズのようにひび割れていく。
心が黒々と、塗られていく。
潰れていく。
発信ボタンを押して、無機質なコール音を聞く。
何回か鳴らしたところで、音が途切れた。
「もしもしちぃちゃん!?」
「久しぶり、透流」
忙しないなあ、と苦笑する。
透流は全然変わらない。
変わったのは私だけだ。


