「これも、秘密にしよう」
そう言って透流に口づけた。
透流は笑って、あまい、と言った。
熱くて、甘くて、あの日と似たキスだった。
けれど、これ以上ないってくらいに悲しいキスだった。
二人とも泣いていた。
もう明日からは二度と戻れない二人になるのだ。
苦しくて辛くて、それでも最後に時間があったことに感謝した。
初めて、帰ってこない母と姉に感謝した。
日が暮れて暗くなっていく部屋の中で、身体を重ねた。
最後になるだろう時間を、そしてこれから空白になっていくだろう二人の時間を埋めるように。
あいしてる。
泣きながら、笑いながら。
馬鹿みたいに言い合った。
あいしてる。ずっとあいしてる。
決して、一緒にいようなんて言えない。
普通の恋人にはどうしてもなれない。
だからその言葉ばかり重ねた。
それしか知らないように。
幸福で、残酷な時間だった。
どちらが先かも分からないほど、溶け合うようにして、二人は眠りに落ちた。
───そして。


