【短編】朝焼けホイップ



 その日は、私たちが母子家庭である最後の日だった。

とはいえ籍を入れるだけで何かをするでもなく、部活に入らない私はいつも通り家に帰った。


携帯を見ると、お母さんから出張に行く旨のメールが届いていた。

式も同居も、けっこう先になるらしい。

それもお母さんらしいことだなと私は少し笑って、自室でコンビニで買ってきたフルーツサンドを食べた。


最近、姉も帰ってこない。

別にグレたとか、不満の表明とかではない。

高校生まで家にいたけれど、大学に入ってから姉はあまり家に帰ってこない。


しかし透流のことは昔から気に入りのようで、いつも機嫌良く接していた。

だからこの結婚に何の問題もないのだ。


私と、透流以外は。


甘いホイップされた生クリーム。

私は甘いものが苦手ではあるが、このフルーツサンドのクリームだけは何故か好きだった。


そしてそれを食べ終わったころ。


インターフォンが鳴った。