【短編】朝焼けホイップ



 自分の部屋に戻って扉を閉めた途端に、涙が溢れてきた。

ふられたからじゃない。

ふられたことを指摘されたからでもない。


私は朝まで恋人同士だった彼よりも何よりも、透流に姉じゃないと言われたことに対して腹を立てていて、そして傷ついているのだ。

そんなことを透流に言われてしまえば、どうしたって堪えられなかった。


最低だ、と思った。

私は最低な女だ。


あれだけ恋人に別れることをごねておきながら、彼よりも自分の弟の発言に泣くのだ。

彼のことなど頭に無かった。

そう分かっていても、私は涙を止められないのだ。

だから会いたくなかった。

透流に会いたくなかった。

透流がいるかもしれない家に、なるべく帰りたくなかった。


だって私は。


───透流が、好きだから。



ああ私は、と少しだけ窓の外を見て自分を嘲笑う。


私は、地獄に落ちるだろう。