「何でそんなこと聞くの、ちぃちゃん」
透流の声も固い。
「姉が弟の心配して、何か悪いことがあるの?」
こんなに刺々しい女だったろうか、私は。
「……ちぃちゃんは、姉じゃないよ。貴音さんはそうでもね」
悪魔のようだ、と思った。
透流は悪魔に違いない。
人を惑わし、悲しみに突き落とす、悪魔なのだ。
「次にそれ言ったら、」
少し声が大きかったかな、と思ったとき、お母さんの呻き声がそれを遮った。
「声、でかい。うるさい、知帆」
次の言葉に詰まる。
私は透流に布巾を投げつけてから、部屋へ駆け上がった。
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