「夕ちゃん」

「どうかしたの?」



首を傾げる彼女はこの暴走族の総長……の彼女である篠宮夕羅(しのみや ゆうら)ちゃん。

優しく、よく周りを見ている子ではある。

……でもねぇ?



「いつまでここにいるのー?」

「え?」

「“ちゃんと辞めてきたわけじゃないよね?”」

「……っ!?」



動揺が隠せない夕ちゃん。
それもそうだろう。

誰にも知られてないと思っていただろうし、知られないようにしていたはずだもん。

嘘はとても上手だった。
僕も初めは全く見抜くことが出来なかったしね?

僕……姫川夢乃(ひめかわ ゆめの)の家は裏の世界では名の通った家だ。

とはいえ、僕は姫川の実子ではないのだけれど……。



「麻君たちが気が付かないから、僕から言うことはしないけど……
“君”が朱雀に害を及ぼすなら容赦はしないよ?」