ルタさんの表情が険しくなった瞬間、フォーゼルは、ぶわっ!と魔力を放出した。
彼の右手の指にはめられた指輪が光り輝く。
彼の攻撃の矛先が、私に向いた。
「俺以外には手ぇ出すな…!」
ルタさんの碧瞳が色味を深める。
体の奥底から湧き上がる魔力を全て出し切るように、彼の氷の魔力が部屋全体を包んだ。
フォーゼルの作り出した人形達は、私の側で腰を抜かしている患者達を攻め立てる。
「うわぁぁぁっ!」
叫び声をあげる患者達に、ルタさんが素早く魔法陣を広げた。
ルタさんの魔法で作り出された氷の壁は、影の攻撃から患者達を間一髪のところで守る。
しかし、安心から呼吸が漏れた次の瞬間。
ルタさんの隙を突くように、フォーゼルが自身の影をグワッ!と変形させた。
影で作られた鋭い爪を持った獣の手が、私目がけて襲いかかる。
ルタさんは患者達を守っているため、こちらに防御魔法をかけられない。
もちろん私は、自身を守る術を知らない。
(やられるっ…!)
思わず目を瞑って痛みを覚悟した
その瞬間だった。



