「そ、それは出来ません、ルタさん!」
「何を言ってんの!まさか、戦う気?そんなのいいから、あんたはただ、魔法で身の安全だけ守ってれば…」
私は、切羽詰まった様子のルタさんの言葉に被せるように叫ぶ。
「私は、魔力を持っていないんです!防御魔法すら使えません…っ!」
ルタさんの碧眼が大きく見開かれた。
その場にいた全員が私に視線を向ける。
と、次の瞬間。
槍を手にした影が、フェリシアちゃん目がけてゆらり、と腕を振り上げた。
(危ない!!)
彼女の小さな瞳が恐怖で震えたその時、無意識に体が動いた。
私は勢いよく地面を蹴り、フェリシアちゃんを抱きしめる。
そして影が振り下ろす槍を避けるように体を投げ出した。
受け身を取る暇もなく、背中が机の脚に打ち付けられた。
かはっ…、と声が漏れたが、痛みなど感じる暇はない。
気を抜けば、すぐ槍で貫かれてしまう。
揺れる視界の中でルタさんは動揺したように私を見つめていたが、すぐに魔法陣を広げると、目にも留まらぬ速さで影たちへ魔力を放出していく。
魔法陣から放たれた凍てつく吹雪は、荒れ狂う人形達の脚を凍らせ、心臓に埋め込まれたかけらを砕いた。



