すると、ルタさんは少し目を見開いて、不機嫌そうに答える。
「“私にはニコリともしないのに”って?」
考えていたことをズバリと言い当てられて喉が詰まる。
ルタさんは、小さく呼吸をして言葉を続けた。
「当たり前でしょ。俺はいつもへらへらしてるランバートと違って、本当に笑いたい時しか笑わないだけ。」
少し居心地悪そうにしているルタさんは、どこか照れているようだ。
こんな言い方は悪いかもしれないが、初対面の時よりずっと人間らしい。
と、その時。
バタン、と診療所の玄関が開く音がした。
やがて、診察室の外の廊下に数名の町民たちがやって来る。
「あぁ、先生。この前の傷を診て欲しいんだが…」
「その次は私を頼むよ。また腰を悪くしてねぇ…」
老若男女がルタさんの患者としてやって来ている。
(町民たちから信頼されているお医者さんなんだな…。さすが、国一番の名医…)
感心してその様子を見ていると、ルタさんは机の上の資料をトントン、とまとめ、ファイルに綴じた。
そして、わずかに顔を曇らせて呟く。
「あー…、悪いけど、もう少し待ってもらえる?奥の患者が気になってるんだ。」
(もしかして、人斬りにやられた彼のことかな…?)



