「あ、あぁ…そうなんですか。」
動揺しながら呟くと、ルタさんは、はぁ、とため息をつきながらフェリシアちゃんに声をかける。
「ここは怪我をした子しか来ちゃダメなの。フェリはもう元気でしょ?」
「せんせーに会いに来たの!またオルガン弾いてっ!」
彼女の言葉に「オルガン?」と尋ねると、フェリシアちゃんは、「せんせーはオルガン弾くの上手なんだよ!」と自慢げに答えた。
(へぇ…、ルタさんってオルガン弾けるんだ…?)
心なしか、フェリシアちゃんに向ける彼の表情は優しげだ。
“フェリ”と愛称で呼ぶ辺り、相当仲がいいのかもしれない。
その時、フェリシアちゃんが、ぎゅうっ!とルタさんの白衣を掴んだ。
「ねぇ、お仕事終わったら遊ぶ?」
「…遊ぶって、何をするつもり?」
「んー、鬼ごっこ!ずっとせんせーが鬼ねっ!」
「何それ。絶対やりたくない。」
するとその時、まるで親に甘えるように笑うフェリシアちゃんに、ルタさんがわずかに口角を上げた。
はっ、とその表情に目を奪われる。
(こんな優しい表情もする人なんだ)
「……何。」
ルタさんが、私に向かって呟いた。
まじまじと見ていたせいで、視線を感じたらしい。
私は、どきりとしながら答える。
「えっと……ルタさんも、笑ったりするんだな、って思って…」



