大剣のエーテル


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「いやがった!あそこだ!」


路地へと入り、人々の喧騒が聞こえる方角へと向かって数分。イヴァンさんが声を上げた。

大通りへと出た後、きょろきょろと辺りを見回すと、人だかりの中心に大剣の先が飛び出ているのが見える。

私はイヴァンさんと共に駆け寄り、人びとの間を縫うようにしながら中心部へと進んでいった。

すると案の定、そこには倒れている男性を庇うように立つランバートと、大きな槍を持った黒い影がいる。

黒い影は、言葉の通り“影”であり、実体はない。

まるで、何かに操られているかのようにゆらゆらと蠢いている。


(ランバートは、何と戦っているの…?)


見たこともない生命体に目を見張っていると、イヴァンさんが小さく息を吐いて拳銃を構えた。


パァン!!


短い銃声の後。黒い影が手にしていた槍が雷の弾に撃ち抜かれ、霧のように消えていく。


と、次の瞬間。

ランバートが強く地面を蹴り、黒い影を大剣で斬り裂いた。

辺りに剣風が吹き荒れ、その場に集まっていた人々は皆、腕で風を凌ぐ。

強風に耐える中、目を開けると、ランバートに斬り裂かれた黒い影は、槍と同じく霧のように空へと消えていった。