(すごい…!いっぱいお店がある…!)
目を輝かせて子どものようにきょろきょろしていると、ランバートが微笑ましいように私を見ながら言った。
「ノアちゃん、気になるものがあったら何でも言ってね。買ってあげる。」
「えっ!…わ、悪いよ…!」
「いーの、いーの。ノアちゃんを連れ出したのは俺だから。うーんとワガママ言っていいんだからね。」
子どもを甘やかすような優しい口調に、私はふいに胸が鳴った。
イヴァンさんは、じろり、とランバートを睨みながら口を開く。
「荷物になるだけの無駄なもんは買うんじゃねぇぞ。ノアはともかく、お前はもうこれ以上私物を増やすな。どうせ俺が持つ羽目になるんだ。」
「あー、そこは大丈夫。俺は本3冊くらいで我慢するから!お金は王が代わりに払ってくれるから使い放題だし…」
「また本か!一国の王を財布代わりにすんな、ボケ!」
私は、再び説教が始まった彼らと共に町の中へと歩き出す。
すれ違う人々は、皆、私を見ても何も言わない。
それはとても新鮮で、どこか落ち着かない。
(見た目だけじゃあ、私が魔法使いじゃないことは分からないもんね。悪口を言う人はいないか。)



