さらに謎が深まったように感じたその時、イヴァンさんが“カンカン”、と小さくフライパンを鳴らして口を開いた。
「さー、せっかく作ったスープが冷めちまう。さっさと食って、出発するぞ。」
意図的に会話を切られたような気もしたが、美味しそうなスープの湯気が消えてきているのも事実だ。
きっと、彼らには私が超えてはいけない
“一線”というものがあるのだろう。
図々しく聞ける立場でもない。
私は、まだ心に靄がかかったままでいたが、それ以上追求することはしなかった。
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「ふぅ、やっと着いたか…。」
町の門をくぐった瞬間。イヴァンさんが、鞄とリュックとスーツケースをどすん、と置いて足を止めた。
疲労が溜まっている様子の彼は、黒いスーツを着ている上に眼光鋭いため、いつにも増して殺し屋オーラが強い。
私は、そんなイヴァンさんの後に続いて足を止め、目の前に広がる町を見回した。
ガヤガヤと活気がある市場が連なり、人々が賑やかに買い物をしている。
明るく、笑顔溢れるその場所は、私が知っている町と同じとは思えない。



